-rotated.jpeg)
ウエイトリフティング元日本代表の三宅宏実さんに、競泳元日本代表の伊藤華英がインタビュー。
月経の悩みや向き合い方、ウエイトリフティングチームの様子、そして階級別競技ならではのプレッシャーについて、率直に語っていただきました。
体重制限のある競技に携わる選手や指導者はもちろん、すべての女子アスリートにとって、競技と身体をどう守っていくかを考えるヒントが詰まっています。
ーーーーーーーーーー
——いいパフォーマンスを出せるように出来る対策は全てやろうと考えていました——
伊藤
現役時代に生理の悩みはありましたか?
三宅さん
私自身、生理は割と軽い方だったのですが、やっぱり生理の時期は体重が増えてしまうことがありました。
減量もしないといけなかったので、生理前はどうしても溜め込みやすくなり、暴飲暴食してしまったり、水分を多く取ってしまったりして、体重のコントロールが難しかったですね。日によっては、腰が痛くなったりといった不調もありました。
伊藤
月経の周期は整っていましたか?
三宅さん
周期自体は整っていました。ただ、体調は結構まちまちで、全然大丈夫な日もあれば、そうじゃない日もありました。
トータルで見ると、私はみんなに比べると結構軽い方だったと思います。
ただ、原因についてははっきり分かっていたわけではなくて、排卵の卵巣が右だったり左だったり、そういう影響もあるのかなとは思っていました。何かしっかりと対策をしていたという感じでもなかったです。
ただ、眠くなったり、体重が増えたりして、「あ、来たな」という感覚はあって、
「だいたいこういうふうになるよね」というのを自分の中で認識して、受け入れるというか、安心するための材料にしていた、というのが、私にとっての対策だったのかなと思います。
伊藤
オリンピックの時ピルを飲んでいましたよね。
三宅さん
はい。ロンドンオリンピックの前に、いいパフォーマンスを出すためにピルを3カ月服用しました。
本当は半年とか1年からできたらよかったのですが、
病院に行ってみないかと言われたのが、だいたい3カ月前ぐらいで、期間的にギリギリになってしまいました。
それでも駆け込みではありましたが、良くなる可能性のあるものは全てやりたいと思ってピルの服用を始めました。
不安材料はすべて消して、少しでも自分がいいパフォーマンスを出せるように出来る対策は全てやろうと考えていました。
伊藤
ピルを飲んでいるときに、副作用について説明を受けたり、自分で気にしていたことはありましたか?
三宅さん
副作用については説明を受けていました。
その前置きがあったので、「この日かな」「あの日かな」と、少しチェックしながら過ごしていました。
選手によっては、結構、副作用が出ている選手もいると聞いていて、今月かな、来月かな、と思ってはいたんですけど、結果的に私は副作用はありませんでした。
伊藤
最初に「副作用があるかもしれない」って思っていたのが、よかったのかもしれないですね。
ピルが良い影響を与えたと言える点はありますか?
三宅さん
一番大きかったのは、自分のパフォーマンスのために逆算して準備ができることでした。
試合にぶつからないようにできることで、不安材料が消える、あるいは減るという点が一番大きかったと思います。私の場合、もともと症状がそこまで重いわけではなかったので、ピルを飲むことで大きく軽減される、という変化はあまり感じなかったんですが、それでも不安が減ったという点は大きかったかなと思います。
——1252公認 女子アスリートコンディショニングエキスパート検定をきっかけに正しい知識を身につけることが、選手の強みや幅を広げることにつながるんじゃないかな、という期待感はすごくあります——
伊藤
こんな知識があったらより良くなったなと、今考えられることはありますか?
三宅さん
当時、月経のメカニズムなどを学ぶ意欲が今に比べたら弱かったんです。
この1252公認 女子アスリートコンディショニングエキスパート検定テキストブックがあったら、栄養のことだったり、なぜ食事をきちんと取らないとパフォーマンスが低下してしまうのか、ということも理解できたと思います。
実際、きちんと食べないことで、疲労骨折につながったりしますし、私自身も疲労骨折を経験してきました。そういったことは、競技生活にすごく関係してくる部分です。
理由や根拠がきちんと分かっていれば、アスリートって、すごく納得できる部分も多かったんじゃないかなと思います。
当時の私は、体重が増えるのが怖くて、食べたものを戻してしまったりする時期が4年くらい続いていました。
でも、きちんとした取り方をすればきちんと体重は落ちるということも、経験として分かってきました。
だからこそ、今の選手たちには正しい取り方をしてきちんと減量してほしいなと思いますね。
伊藤
トップアスリートの中には、自分の成績が最優先で、月経のコンディションを整えていくことが、正直、めんどくさかったり、ちょっと煩わしく感じてしまって、
「月経とか関係ないよ」「それより毎日ちゃんと練習できることの方が大事」「命懸けで競技をやっているのに、月経コンディションなんて別に興味ない」という選手もいると思いますが、三宅さんの指導している選手はいかがですか?
三宅さん
指導するときに、顔色を見たり、動きを見て「ちょっと調子が悪そうだな」と感じ取るところから始まります。そこで「今日はどう?」と声をかけて、体調の話につながることもあります。
ウエイトリフティングの選手で、症状が重い選手については、ほとんどJISS(国立スポーツ科学センター)の能瀬先生のお世話になっているので、プロがいるところはプロに任せる、という形で依頼したりもしています。そこは恥ずかしがることではなくて、積極的に使っていい部分だと思っています。
選手たちも、「練習の一部」と捉えながら、割と自分から進んで診察を受けに行っています。
ただ、やっぱり月経について深くは知らないことも多い。
だからこそ、たとえば1252エキスパート検定のようなものがきっかけになって、「こういうメカニズムなんだ」とか、「いろんなことが関係しているんだ」と考え方が変わることもあると思います。
そういう気づきが、選手の強みや幅を広げることにつながるんじゃないかな、という期待感はすごくありますね。
伊藤
そうして月経に関しても、コーチや指導者の方たちが、いい形で当たり前のように関わってくれるようになるといいなと思います。
——月経時のメンタル面の対策は、「受け入れる」こと、気の合うチームメイトとたわいもない話をすること——
伊藤
月経の症状はあまり重くないとおっしゃっていましたが、メンタル面の影響はいかがでしたか。
三宅さん
波はありましたね。
心が狭くなりやすかったりはあったと思います。
でも、それも「これはホルモンの関係なんだな」と思うことで、少し気が楽になった部分はありました。気の合うチームメイトとたわいもない話をして解消したり、そういうことはしていたかなと思います。
メンタル面の対策としては、うまく言葉にするのが難しいんですけど、結局は「受け入れる」ということだったのかなと思います。
「こういう時期が来たんだな」「イライラしているのは、このせいだな」と捉えることで、気持ちを和らげていました。
あとは、食べたい時は食べる、という感じでしたね。
伊藤
トレーニングセンターなどで会った時も、ウエイトの選手たちは何を食べるかって話を結構してたなっていう印象があります。
三宅さん
階級制だからこそ、より食べ物に執着しやすいのかもしれないです。
何食べようかな?っていつも考えているのでよく話題に出ています。
伊藤
生理への対策としては、みんなで会話して気を晴らすというのが良かったのかもしれないですね。
三宅さん
生理の時は、大きな生理用のパンツを「今日はこんなのはいてるよ」って笑い合ったり、「私、今日生理だわ」とオープンに言えるようなチームメイトだったのでそれがよかったですね。
伊藤
そうですよね。競技によって雰囲気も違いますし、話しやすさや、気持ちの解消の仕方も違うと思います。
環境としては、チームメイトの存在はすごく大きくて、いい形で生理の悩みなどを紛らわせてくれていたのかな、不安やイライラを、チームの中で解消できていたのかなという印象があります。

——頭がどうしても体重のことにいってしまって、血が減るイコール体重が減る、食べられるというふうに思ってしまいます——
伊藤
月経周期に合わせて、トレーニング内容を変えたりすることはありましたか?
三宅さん
試合に向けて調整していく中で、この日に100%挑戦するという日を決めていくんです。
もし試合と生理が重なったとしても、試合は絶対にやらなくてはいけない、力を発揮しなくてはいけない。そこは割り切らないといけない部分でした。
生理にぶつかったとしても、試合を想定しながら、マインドを切り替えて臨んでいましたね。
試合以外の時期については、トレーニング内容を変えたり、体調に合わせて調整するという形を取っていました。
伊藤
ウエイトの練習は、挙げてまた挙げてとずっとトレーニング場にいますが、月経のときはナプキンを使用していましたか?
三宅さん
タンポンは怖くて使えなかったので、私はナプキンを使用していました。選手によっては、タンポンを使う選手もいたと思いますが、当時も今も、ウエイトの選手はナプキン派が多かったんじゃないかなと思います。
正直、漏れてしまうこともあって、私もそうでしたし、そういう選手は結構いたんじゃないかな、という気はしています。
伊藤
腰をサポートするベルトを巻いたりしますよね。
そうすると、ナプキンがずれても簡単には直すこともできなさそうですね。
三宅さん
今は分からないですけど、私の世代は、結構オープンでしたので、スパッツの中に食い込んでいるのをちゃんと直す、みたいなことを普通にやっていました。トレーニング場は女子だけでしたし、みんな練習に集中していたので、さりげなく直していたんじゃないかなと思います。
伊藤
漏れや蒸れについてはどのような対処をしていましたか?
三宅さん
みんな黒いスパッツを履いているので、見た目では分からないですし、自分で漏れているかどうかは、あまり分からないと思います。
トイレに行って替えたり、大きめのナプキンを使ったりしていました。
「このメーカーがいい」とか、そういう話もしていましたね。
やっぱり漏れてしまうこともありますし、量も多かったり、体質によって違いもあるので、みんな比較的大きめのものを使って練習していたんじゃないかなと思います。
ちょっと深い話ですけど、そんな感じで対処していましたね。
伊藤
ウエイトをあげて力が入った時に、ドバッと一気に出てしまったりしますか。
三宅さん
練習中は止まっていることが多い気がしますね。練習が終わった時に出る気がします。心身と関係があるのかな?
伊藤
婦人科の先生は、意思では経血の量は調整できないって言っていましたね。でも、水泳は泳いでるときはタンポンしてるので問題ないですが、上がった時にドバーって出るということはあります。
三宅さん
一方で、生理で血が出ると体重が落ちて嬉しいみたいな面もあります。
伊藤
やっぱり、体重のことが頭に浮かぶんですね。
三宅さん
やっぱり頭がどうしても体重のことにいってしまって、血が減るイコール体重が減る、食べられるというふうに思ってしまいますね。
伊藤
水泳は体重を気にするっていうのはなかったですね。「食べられる」っていう発想にはならなかった。血が出たら食べられるという思考回路ではなくて、やっぱり階級制度ならではの感覚なのかなという感じがしました。
——任せられるところは基本的にはプロに任せてやってもらう。それが今のところ一番ベストな形なのかな——
伊藤
指導者やコーチも、女子アスリートならではの体の変化や月経について考える必要がありますよね。
お父様はコーチでもあったわけですけど、すごくきちんとしていましたよね。
月経の知識についても、しっかり伝えてくれていた印象があります。
三宅さん
専門的なことについては、父も「女性のことだから」という意識があったと思います。
ですので、能瀬先生のところに相談に行ってこいみたいな感じで勧めてくれていました。
調子が悪い時は、練習量を下げるように言ってくれていたので、そういう指導法だったのかなと思いますね。
もともと生理の話を人にすることに強い抵抗があるタイプではないんですけど、
やっぱり父としては介入しづらい部分もあったと思います。
そのあたりはもう「専門家に任せる」というスタンスだったんじゃないかなと思いますね。
伊藤
指導者側にそういう知識がないと、自分から「病院に相談に行きます」って言えない選手も結構多いと思うんです。
指導者が背中を押してくれるっていうのは選手にとってすごくいいことだと思いますが、そのあたりはいかがですか?
三宅さん
やっぱりいいことだと本当に思います。
私も今、選手に対しては「病院に相談に行ったほうがいいよ」と声をかけるようにはしています。ただ、社会人の選手なので行くか行かないかは最後は本人次第というところもあって、
基本的には「紹介する」という形にして、その先は本人に任せるというスタンスですね。
伊藤
指導者側も悩むところはあると思うんですけど、その距離感もすごくいいなと思っていて、そういう体制を三宅家が作ってきたからこそ、社会人の選手たちにも自然とそういう行動ができる雰囲気があったのかなと感じました。
実際、当時はお父様に相談はしていたんですか?
三宅さん
いえ、相談はしていませんでした。
月経について父と話すことは、あまりなかったですし、生理があることを言っていいのかどうかも、よく分からなかったというのもあったと思います。
調子が悪い時は、「今日は生理です」みたいな感じで伝えることはありましたけど、そこから話が広がることは特になくて。
あとは、多分父も言いづらいところがあったと思うんです。
「俺はそういう痛みとかは分からないから、自分で調整しなさい」というような、そんなスタンスだったと思いますね。
伊藤
小さい頃からずっと一緒にやってきたからこそ、その距離感もバランスよく保てていたのかもしれないですね。
三宅さん
そうですね。
もちろん今は、社会人の選手も預かって見ていますけど、その距離感というのはやっぱり大事だなと感じています。
どこまで関わるかという部分も含めて、栄養のことなど、任せられるところは基本的にはプロに任せてやってもらう。
自分の負担も考えた上で、それが今のところ一番ベストな形なのかなと思っていますね。
伊藤
選手から相談を受けることはありますか?
三宅さん
選手のほうから自分から言ってくることは、なかなかないですね。
生理のことだったり、体調のことだったりも、こちらから聞かない限りは話さない、というのが今の現状だと思います。
例えば、こちらから聞いてみて初めて、「私、貧血があるんです」と話してくれて、その中で、「サプリメントを飲んだらすごく改善しました」という話を聞くこともありました。特に社会人の選手は、自分のことを一人で考えることの方が多いと思うので、こちらから聞かないと見えてこない部分が、まだまだあるのかなと思います。
一方で、私自身も、どこまで聞いていいのかな、という迷いもあり、今も悩みながら向き合っているところですね。
体調についても、「大丈夫?」って聞いたときに、「大丈夫です!」と答える選手もいれば、「今日はちょっと体調が悪くて」と正直に話してくれる選手もいます。
そういうやり取りの中で、顔色や表情を見ながら、少しずつ判断している、という感じが多いかなと思いますね。
私は今、女子を2人見ていますがそれでも結構手いっぱいなところがあります。
伊藤
レベルが上がれば上がるほど、選手はそれぞれ自分の世界があるし、自分なりの答えみたいなものを持っているじゃないですか。
トレーニングの仕方や減量、これまで積み上げてきたもの、そういうところに入っていくのはしっかり様子を見ないといけないですよね。
選手を自立させなくてはいけない部分もあるし、でも一方で、少しでもパフォーマンスに影響が出そうなら介入していかなくてはいけないし、そのバランスが難しいところですよね。
三宅さん
そうですね。結構難しいなと感じます。
どこまで踏み込んでいいのか悩みますね。

——昔は、どちらかというと感覚的でアバウトなところもありましたけど、今の選手たちは、情報を大切にする子が多いと思います——
伊藤
現役だった頃と比べて、今のほうが月経について話しやすい環境になってきているな、と感じますか?
三宅さん
基本的に、ウエイトの選手たちはわりと何でも話してくれる選手が多いと思っています。 現役当時は「今日、生理やわ」とか、「今日、2日目やわ」みたいに、わりとオープンに話していて、結構おおらかというか、ちょっと面白い子たちが多かった印象があります。ただ、それはそれで、少しまれな世代だったのかなとも思います。
今は勉強熱心な選手が多い印象ですね。
自分の体のことや、月経に関する情報を「知りたい」「学びたい」と思っている子は、結構多いと感じています。
昔は、どちらかというと感覚的でアバウトなところもありましたけど、今の選手たちは、情報を大切にする子が多いと思いますね。
伊藤
そうですね、本当に我々の時とはだいぶ雰囲気が違いますよね。
何が違うのかなって考えると、やっぱりSNSがあるからなのかなと思います。
この間、ある学生が「生理で悩んだときはChatGPTに聞いています」って言っていて、大学生くらいの子たちは、それで大丈夫ですって言っていましたし、そういう時代なんだと思いました。私としては、本当に大丈夫なの?って思ってしまうけれど。
現役時代、月経の悩みを相談できたり、病院に行けるような体制や仕組み、雰囲気はありましたか?
三宅さん
フィットネスチェックの中で、選手から選手へ、「こういうのがあるよ」「行ってみたら?」という形でJISSや病院に相談へと繋がる流れはあったと思います。
ただ、相談に行けばいいと分かっていても、実際に行くかどうかは別で、行かない選手や、詳しくは知らないままの選手もいたと思います。
当時は、ピルも今ほど身近なものではなかったですし、
「これでいいのかな?」と迷いながら過ごしていた選手も多かったと思います。
だから、痛みを抱えながら、鎮痛剤を処方してもらってそれで何とか乗り切っていた、そんな世代だった気がしますね
今のほうが、時代とともに、ピルを活用している選手はかなり増えていると思います。
そうした中で、講習や病院に行くきっかけも、徐々に増えてきているのかなと感じています。
伊藤
月経の悩みは、わざわざみんなで共有するものではないですけれど、月経の症状などの会話ができる雰囲気があること、そうした環境づくりは、とても重要だと感じていますし、私たちも意識して取り組んでいるところです。
三宅さん
会話ができたのは人数が少ない競技だから、という特徴もあるかもしれません。
合宿に行っても、だいたい10人くらいの小規模なことが多くて、それには良い面も悪い面もありますし、世代ごとの雰囲気にもよりますが比較的オールマイティーに関わっていた印象があります。
やはり今は、情報を個々で簡単に取れてしまう時代なので、そのあたりは、私たちの頃とは少し違ってきているのかな、という気はしますね。
伊藤
共通の月経リテラシーというか、ヘルスリテラシーのようなものが、チームの中で一つのボーダーラインとして共有できると、いいのかもしれないなと思います。
——正しい食事の摂り方で減量をしたときに、体重を落としても重量がそんなに落ちないなと体感。
その経験から、食事の内容や摂り方は本当に大事なんだなと身をもって感じました——
伊藤
階級がある競技だから、常に体重のことを考えていた、という話もされていましたよね。減量のことでどのような悩みがありましたか。
三宅さん
やっぱり、ストレスは大きかったですね。
落とせなかったらどうしよう、という不安もありましたし、体重が増えてしまうとそこから落とすのが本当に大変になるので、その恐怖感やプレッシャーは常にありました。
ただ、体重を落とすことで、パフォーマンスへの影響もすごくあって。
たとえば、170キロ挙げられていたものが、体重を2キロ落としただけでも、78キロ級では一気に挙げられる重量が落ちてしまう、ということもあるんです。
正しい減量ができていないと、疲労骨折につながったり、思うようなパフォーマンスが出なかったりする。
短期で落とす方法も試しましたし、長期で調整するやり方もいろいろやってきました。
でも最後に、きちんと専門の方についてもらって、正しい食事の摂り方で減量をしたときに、体重を落としても重量がそんなに落ちないなと体感できたんです。
その経験から、食事の内容や摂り方は本当に大事なんだなと身をもって感じました。
伊藤
ずっと体重コントロールを続けてきて、最後にやっと「これだ」と思える方法に出会えたんですね。
三宅さん
そうなんです。20代の頃って、正直あまり食べなくても練習ができてしまっていたんですよね。でも、それがだんだん、26歳、30歳くらいになってくると、体に出てくるようになってきて。
30歳になってから、改めて栄養士さんに見てもらうようになって、その方との相性がすごく良かったというのもありますが、実際にやってみて「あ、全然違うな」というのを実感しました。
これがもっと早い段階ででき、ちゃんと理解して取り組めていたら、もっとパフォーマンスが上がっていたんじゃないかなと思うこともあります。
そういう意味でも、ウエイトリフティングにとって減量というのは避けられない部分ですし、そのやり方については、まだまだ課題がある分野だというふうに感じています。
伊藤
体重を試合に向けて調整していく、いわゆる階級制競技の選手の方々に話を聞いても、実は「これが正解」という答えがなくて、やり方が似ている人もいれば、本当にいろんなことを試しながらやっている人もいて、結構みんな自分でやっている印象が強いんですよね。
私のイメージだと、もっと指導者が介入して、チーム全体で体重管理をしていくのかなと思いたんですが、実際には、「1週間で落とします」とか「2週間でやります」とか、 人によって全然違っていて、本当にやり方がさまざまで驚きました。
こうした体重調整の考え方や向き合い方は、小さい頃から少しずつ養っていくものなんですか。
三宅さん
当時はそういう情報が十分にあったわけでもなくて、正直、よく分からないままやっていた部分が大きかったかなという気がします。
高校生の頃は、親が食事を作ってくれていて、ある程度は管理してもらっていて、そこを離れてからは、自分で取捨選択していかなければならなくなって。でも、正しいやり方を細かく理解できていたかというと、私自身も分からない部分がたくさんありました。
当時はJISSもあって、栄養士さんに相談できる環境はあったはずなんです。でも、結局、自分からそこに行かなかったというのも、今振り返ると反省点だなと思っています。
その後、何年もいろいろ試しながらやってきて、最後にもう一度、栄養士さんについてもらったときに、本当にガラッと変わった感覚がありました。
だからこそ、高校生や大学生といった、まだ柔軟な時期に、こうした知識や考え方を身につけておくことは、すごく大事なんじゃないかなと思います。
実際、体重管理のやり方も、1か月前から徐々にやる人もいれば、短期間で一気にやる人もいて、本当にバラバラで、多くの選手が、それぞれ自分自身で管理しているのが現状だと思いますね。
伊藤
月経のこともそうですし、体重調整もそうですけど、その選手に合うやり方って本当にそれぞれ違っていて、答えが一つある世界じゃないと思うんです。
結果を出さなきゃいけない中で、体重も落とさなきゃいけない。
体重を落とさないと、そもそも試合に出られない、みたいな世界じゃないですか。そこが本当にすごいなって、階級制の競技の方と話すたびに思うんですけど、やっている側からすると、それがもう「普通」なんですよね。
サウナに入っても水を飲まないとか、いろんなことを当たり前のようにやっていて。 男子選手も含めて、階級競技って本当に過酷だといつも感じています。
ーーーーーーーーーー
今回は、三宅さんにウエイトリフティング競技の具体的な事例もお話しいただきました。
競技ごとの月経への向き合い方や対策についてはまだまだ課題も多く、今後さらに考えていく必要があります。
三宅さんの、月経を「受け入れる」、任せられるところは基本的にはプロに任せるという考え方は全てのアスリートにとって、また、減量と食事については階級制競技に取り組む方にとって、多くの気づきやヒントが得られるものとなったのではないでしょうか。
競技力の向上と、身体を守ること。
その両立を考えるきっかけとして、本インタビューが役立てば幸いです。
<三宅宏実さんプロフィール>
元ウエイトリフティング日本代表
いちご株式会社 いちごウエイトリフティング部 コーチ
Xアカウント @ichigo_group
<伊藤華英プロフィール>
元競泳日本代表
一般社団法人スポーツを止めるな 代表理事