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柿原奈央子さん(一般社団法人日本チアダンス協会 理事)
投稿日 2025.11.20

選手が安心して"言える環境"を整えるために"理解し合うための仕組み"の構築が大切
ーー1252エキスパート検定との出会いと学び

現在、日本チアダンス協会の理事・プログラムディレクターとして、チアダンスの女子アスリートの指導に活躍する柿原さん。偶然、1252エキスパート検定を見つけた時に、「これは、女子アスリートと常に関わる私に必要な学びだ」と感じ、受検を決意されたそうです。

今回は、2級・1級を取得した柿原さんに、その知識と学びの経験をどのように活かしているのか、テキストの活用法や意識の変化などについて語っていただきました。

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―検定を受検されたきっかけを聞かせてください。

柿原さん:
私は、チアダンスの指導を長く続けています。日本では「チアダンス」と呼ばれていますが、国際的には「パフォーマンスチア」という競技名です。

チアリーディング国際統括団体であり、国際オリンピック委員会(IOC)に正式加盟しているInternationalCheerUnion(ICU)が主催する世界大会に、私が振付・指導に関わっていた小学6年生から中学3年生のチームが、2024年4月にアメリカ・オーランドへ派遣される日本代表チームとして選出されました。
そんな彼女たちを率いてアメリカへ行くという大きな節目のタイミングで、「女子アスリート検定」や「1252プロジェクト」という言葉を目にして、「女子アスリート」というワードに強く惹かれました。
私自身、女子への指導しかしていないので、「これはもう自分ごとだ」と思い、まずはどんなものか知ってみよう、勉強してみよう、と受検を決めました。

日頃から女子選手を指導している私にとって、「女子に焦点が当たっている」という点が本当に大きなポイントだったと思います。

―今回、『1252公認 女子アスリートコンディショニングエキスパート検定』の2級・1級ともに合格されましたが、学びや気づき、行動の変化などはありましたか?

柿原さん:
アメリカ遠征の時期、小学生から中学生までのメンバーを預かっていたので、「子どもたちの体調や心のケアをどう支えるか」という責任をとても感じていました。

特に体が変化し始める年代なので、本人たちもデリケートですし、初めての海外という不安もあります。22名のアスリートを引率する中で、「体調の変化や生理のことなどで困ることがあってはいけない」と思いました。

今まで指導してきた中で、生理について、 「辛い?」「毎月順調に来てる?」と聞くこともなく、そこにはなかなか踏み込めていませんでした。けれど、女子にとっては誰もが抱える大切なことですので、渡米前に保護者と選手両方に向けて個人面談表のようなアンケートを作成しました。

このチームの選手たちとは、月に一度のレッスンでしか会えない状況でした。だからこそ、アンケートを通して選手一人ひとりの状態や特性をチームとして把握し、チームを率いているコーチ陣で選手のケアをできるようにしたかったんです。

その際に参考にしたのが、この『1252公認 女子アスリートコンディショニングエキスパート検定テキストブック』でした。
テキストの内容をもとに、体調や心配事、既往歴、生理周期など、無理のない範囲で答えてもらい、海外遠征時の生理のタイミングも確認しました。
また、現地で生理になった時に困らないよう、あらかじめ普段使っている生理用品を聞いて、同じ物を多めに準備してスーツケースに入れて持って行きました。言葉が通じにくい環境で、子どもたちが戸惑わないようにしたかったんです。

さらに、検定で学んだ「クリーンスポーツ」や「アンチ・ドーピング」についても活かせました。今回は日本代表として参加したため、JADA(公益財団法人 日本アンチ・ドーピング機構)のeラーニングを受ける必要があったのですが、その内容が検定ともリンクしていて、とても理解しやすかったです。

常備薬やTUE(治療使用特例)についてもアンケートで確認するなど、学んだ知識を実践に活かすことができました。
この検定を通して得た知識とテキストは、私にとって本当に大きなツールになりました。

―検定の第5章では、JADA(公益財団法人 日本アンチ・ドーピング機構)の編集協力のもと、室伏由佳先生にアンチ・ドーピングの項目を執筆していただいたのですが、まさにその部分が現場で役立ったと聞けて嬉しいです。

柿原さん:
私たちのチアは、アマチュアスポーツなので、「ドーピングってプロ選手の話」と思ってしまいがちでした。
でも、今回の世界大会に出るにあたり、日本代表として検査を受ける可能性があると知って、改めて「どんな立場の選手でも知っておくべきことなんだ」と感じました。何がアスリートとして正しいのか、ということを知っておくことは指導をするうえで知っておくべきだと自覚しました。
20年以上指導してきて、ようやくこうした学びの必要性を自覚する機会を得られたことに、とても感謝しています。

―女子アスリートを指導する上で、学びの機会の重要性をどのように感じていますか?

柿原さん:
私が育った時代は「腹筋100回、200回やれば強くなる!」という感覚で(笑)。
でも今は、効率よく鍛える方法や、動きと連動させるトレーニングなど、情報がどんどんアップデートされています。
フィジカル面では、体幹やバランストレーニングの重要性を感じ、体幹トレーニングの指導者としてのライセンスを取得したり、柔軟性向上のための講習を受講しに行きました。
この『1252公認 女子アスリートコンディショニングエキスパート検定』もですが、指導者として必要であろう知識を得る様々な努力をし、アスリートに還元しようと取り組んできました。
数年前に新しいと思ったことも、今は主流となり、更に新しいメソッドや情報が出ています。情報は、手軽に多種多様なものを得られる一方で、善悪の判断も難しくなっているのも事実です。ですので、自ら学びに行くことや、トライアンドエラーでより自分の指導に即しているのか、効率的なのかなどの見極めをし、そのプロセスはより重要になるということを実感しています。

―実際の指導や活動の中で、この検定の学びを活かす上で感じている課題や悩みはありますか?

柿原さん:
やはり、知識が自分の中にあるだけで完結してしまっている部分が多いので、得た知識をどうやって実際の指導に活かしていくか――そこが本当に難しいところで今の私の課題です。

私自身は、生理がそれほど重くなかったタイプなので、 PMS(月経前症候群)やPMDD(月経前不快気分障害)に悩んだこともなく、「生理のとき少し体が重いな」くらいで終わっていました。
でも、実際には人によって症状の重さも感じ方も全然違う。そこをしっかり理解して寄り添う必要があるなと感じています。

そもそも、日本の中で生理についてオープンに話す文化は、まだあまりないですよね。
私もそうですが、女子同士でも、そういう話をすることがほとんどない。

このインタビューを受けるにあたって、大学生の教え子に「生理のことって仲間同士で話したりする?」と聞いてみたんですが、
せいぜい「生理きた」くらいの話はしても、「今日こんなふうにしんどくて」とか「これが困っている」という話はほとんどしないそうです。

私自身も現役時代、体重を落とそうとダイエットして生理が止まったことがあって、そのときは「ないならないで楽だな」と思ってしまっていたんです。
それが正常なことではないというのを、今では理解しています。
ただ、当時は、 薄々「体によくないだろうな」と思ってはいたけれど、きちんと知識として理解していませんでした。

今は、「そういうときは婦人科に行った方がいい」と思えるようになったけれど、こちらから「あなたの生理どう?」とはなかなか聞けない。
だから、選手側も言いづらいままなんですよね。
言える環境ではない。そこがいちばんの課題だと感じています。どうやったら「話せる空気」をつくれるのか。
年度の始まりやシーズンに入るタイミングなどで、こちらの側から「そういうことも理解していきたい」という姿勢を見せることが大切なのかもしれません。
そうすれば、「先生、今日生理です」や「生理前で少し不調なんです」と選手が自然に言えるようになる。
そういう空気をつくることが、まず最初の一歩だと思っています。

―これまでのお話の中でも「どう実践するか」が大きなテーマとしてありましたが、実際に検定の学びをどのように活かしていきたいですか?

柿原さん:
どう活かすかという点では、たとえばこの『1252公認 女子アスリートコンディショニングエキスパート検定テキストブック』の内容を参考にして、自分なりに少しアレンジを加えたシートを作り、シーズンが始まる前に選手一人ひとりと共有するのが良いかと考えています。

お互いに体調や考えを共有しておくことで、指導者としても選手のことをより理解できますし、チーム全体としても「この子はこういう特性があるんだ」という理解が進むと思います。そうすれば、お互いが気を配れる関係を築けるんじゃないかと思います。

チアダンスは団体競技なので、「自分が休んだら迷惑をかけてしまう」という意識が強いんです。
個人競技のように「今日は体調が悪いからやめよう」と簡単に決断できない雰囲気が、どうしてもチームの中にあるし、私もそうでした。

だからこそ、最初に“理解し合うための仕組み”をつくっておくことが大切だと思っています。選手が安心して“言える環境”を少しずつ整えていけたらと考えています。

―チームの小中学生には、どのようなサポートをしていますか?

柿原さん:
正直に言うと、これまでほとんど何もできていなかったんです。
小学生でも生理が始まっている子がいたり、中学生でもまだの子がいたりという状況を、指導者として把握できていませんでした。
保護者の方と話す中で、「うちの子、中学生なんだけどまだ生理がないんです」と聞いて、初めて「あ、そうなんだ」と気づくような感じでした。

やっぱり、本人たちが生理についてコーチや親以外の人に話すということは、まだ難しいのだと思います。
「生理のことを言ってもいい」という雰囲気が、そもそもないのかなと感じています。

私自身も小学校5年生の娘がいるんですが、学校で生理の授業は受けても、それを家に持ち帰って「こんな話だったよ」と話すことはなかなかないです。

学校の保護者会の時に、「生理が始まった時に娘が先生に言えるかどうかが心配です」と男性の担任の先生に率直に伝えました。

先生は、最近は「今日生理なんです」って言ってくる子もいます。と、話されていて、「今の子ってそんなふうに言えるんだ」と驚きました。

周りのお母さんたちとも「うちはお姉ちゃんがいて、こんなふうに対応しましたよ」と話してもらえたり、親同士で情報を共有でき、娘にも、「先生に言っていいんだよ」と伝えることができました。

それでも、小学生や中学生の子どもたちが、学校や先生と生理について話すというのは、今でもすごくハードルが高いと感じています。

だからこそ、私たち指導者や保護者が、まず“話してもいいんだよ”という姿勢を見せることが、第一歩なのかなと思います。

―実際の指導や活動において、検定で学んだことを少しでも活かせた経験はありますか?

柿原さん:
面談シートを作る際に、『1252公認 女子アスリートコンディショニングエキスパート検定テキストブック』の内容をかなり参考にさせてもらいました。項目を見ながら、自分でも踏み込みやすくなったというか、「こういうことを聞いてもいいんだ」と思えるようになったことで、自分の中のハードルが下がったように感じます。

それから、生理のこと以外でも、今のスポーツ現場ではハラスメントやコミュニケーションの課題もありますよね。その点で選手が真ん中にいるという「プレイヤーズセンタード」の考え方――つまり、選手が中心で、私たちはそれを支える立場なんだという考え方を意識するようになりました。私たちが受けてきた時代とは少し違う感覚で、そうした視点の転換が求められていると感じます。

テキストで、非言語コミュニケーションの方が伝わりやすいよ、というようなことが書かれていて、読んでいると「確かにそうだな」と思うんです。そういう気づきをもとに、できる限りアスリート自身が「自分で選択して練習できる」方向に導けるように、指導の工夫をしています。

―選手が自分で考え、行動できるように促す指導に変わってきたんですね。

柿原さん:
そうですね。私はどちらかというと“スパルタ”のような環境で育ってきたので、若い頃はつい自分もそうしてしまっていたんです。20年以上指導してきましたが、若い時ほど「詰めてやらせる」スタイルでした。

でも、時代も変わりました。アスリートの特性も、保護者の考え方も、スポーツを取り巻く環境そのものも。だからこそ、これまでのやり方がいつまでも正しいとは限らないし、むしろ間違っていたこともあったなと振り返るようになりました。

今はできるだけ「命令」ではなく「質問」に変えるようにしています。例えば、「どうしたい?」と尋ねて、「やる」と答えたのは自分たちなんだから、じゃあやってみようね、と。時間はかかるけれど、子どもたち自身が自分の言葉で考え、選び、行動できるように導いていく――そういう指導へと、自分の中でも変化してきたなと感じています。

―では最後に、これから検定を受検される皆さまへ、メッセージやアドバイスをお願いします。

 柿原さん:
この検定は男性・女性にかかわらず、すべての方に知っておいてほしい内容だと思います。女子アスリートはもちろん、指導者やサポートする立場の方にも広く届いてほしいというのが願いです。

女子のスポーツ現場には、女性トレーナーがまだ少ない。私がアメリカ遠征に一緒に行ったチームも、男性のトレーナーさんにお願いしていました。そのトレーナーさんは、他の競技種目の女子チームのトレーナーも務められていたので、安心してお任せしていましたが、女性の少ない分野においては、「男性にも女子アスリートの身体的特徴を理解してもらうことが大事だな」と感じました。

PMSや生理痛などは、同じ女性でも経験していないと分からないことがあります。ですから、アスリート自身も、そして指導者やサポートスタッフも、多くの方がこの検定を通じて知識を得ることが大切だと思います。

私は受検後、友人にも「この検定、すごく良かったよ」と伝えて、実際に一緒に受けた人もいます。面談シートも共有して、「これ使ってみて」と渡したこともありました。そうして少しずつ口コミのように広がっていけばいいなと思います。「一人で受ける」よりも、「周りを巻き込んで一緒に受ける」。それが理解や共通認識を広げる一歩になるのではないでしょうか。
ぜひ、仲間やチームメイトと一緒にチャレンジしてみてください。

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チアダンス界を牽引する柿原さん。『1252公認 女子アスリートコンディショニングエキスパート検定』やテキストブックで学んだ知識を、アスリートとの関わりの中で存分に有効活用しているようです。

柿原さんは、1人でも多くの人がまわりの仲間と一緒に、正しい知識を身につけて理解のある環境が広がっていくことを願っていると話します。

『1252公認 女子アスリートコンディショニングエキスパート検定』は、女子アスリート本人や彼女たちに関わる全ての人にとって大切な知識を得ることのできる検定です。ぜひみなさんも、テキストブックを手に取って、検定にチャレンジしてみてください。

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<柿原奈央子さんプロフィール>
一般社団法人日本チアダンス協会 理事・プログラムディレクター
スペシャルオリンピックス日本 トレーナー
KOBA式☆体幹バランスSライセンス取得 マスタートレーナー

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