
「もっとできることがあったかもしれない」
――その小さな後悔が、吉池さんの学びを深めるきっかけになりました。
知らないままでは、気づけないことがある。
そう感じた吉池さんは文献を読みながら学び続けるうちに、1252エキスパート検定の存在を知りました。
プロジェクトの想いに触れ、「私もきちんと学びたい」と自然に心が動いたといいます。
元アスリートとして、トレーナーとして、そして子育て中の母としての立場から、スポーツと生理、1252エキスパート検定受検の勉強法についてお話しいただきました。
ーーーーーーーーーー
ーこれまでのアスリートとの関わりについて教えてください。
吉池さん:
高校卒業後、鍼灸師の資格取得のために学校へ通いながら、母校柔道部のトレーナーとして活動を始めました。資格取得後は約3年間学生アスリートをサポートし、続いて地元の整形外科で4年間、学生から社会人アスリートの競技復帰トレーニングに携わりました。アスレチックトレーナーの資格取得後は東京マラソンでのランナーサポートやラグビー大会での救護活動にも参加しました。
その後、子どもの発達や動作習得に貢献したいという思いから、小学生以下を対象とするスポーツトレーナーへ転職。現在は結婚・出産を経て育児休業中ですが、将来必ずスポーツ現場に戻りたいと考えています。
柔道は小学2年生から21年間続け、昨年までは出身道場で小・中学生の指導に携わっていました。
ー検定を受検されたきっかけを教えてください。
吉池さん:
トレーナーやコーチとして多くの女性アスリートと関わる中で、スポーツと生理の問題について深く考えさせられる出来事がありました。
数年前、陸上部所属の中学生女子アスリートのスポーツリハビリを担当しました。中長距離選手で、シンスプリントという疲労骨折後の復帰に向けたリバビリのため来院されていました。当時の私は、動作改善やフォーム習得に重点を置き、性別や生理の状況を考慮せずにトレーニングメニューを作成していました。
怪我を繰り返す彼女に対し、理学療法士と相談した結果、OTS(オーバートレーニング症候群)の可能性を指摘し、練習量の制限を提案することしかできませんでした。その後、彼女がリハビリを卒業し、競技復帰した数年後、私はREDs(スポーツにおける相対的エネルギー不足)について知りました。その内容はまさに彼女の状況に当てはまり、当時、生理の状況をきちんと聞き取りREDsを疑い、栄養や食事の改善まで踏み込むべきだったと後悔し、「もっと生理について学び知識をつけなければ、救える状況も救えない」と強く思いました。
情報も少なく、どう学んでいけばよいか模索していた際、知り合いの先生から1252検定の存在を教えていただきました。プロジェクト名の由来や代表の想いに触れ、「絶対に受けよう」と心を決めました。
ー柔道でご活躍されていた時に、ご自身の生理の悩みや困ったことなどはありましたか?
吉池さん:
私は小学2年生から柔道を始め、身体が大きかったこともあり、初潮は小学4年でした。練習中にナプキンの蒸れでかゆくなって集中できなかったり、交換のタイミングが分からず漏れてしまうことも多くありました。しかし、周囲の友達はまだ生理が始まっておらず、恥ずかしさもあって親以外には話すことができず、当時はとても孤独で不安でした。母が柔道経験者の知人に相談し対策を考えたり、監督にお願いして道場のトイレへサニタリーボックスを置いてもらうところから始めました。
高校に入ってからは、増量・減量の両方を経験しましたが、特に減量期の生理は辛く、体重が落ちにくい、体が重く練習だけで精一杯、精神的にも不安定になるなど苦しい思いをしました。私は月経量が多く血餅も出るため、2〜3日目は特に練習が辛かったです。過度な食事制限で生理が止まったこともありました。その後は周期も乱れ、生理不順になりました。働き始めて子宮頸がん検診を受けた際、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と診断されました。
当時は月経に関する情報が少なく、「生理で休むのはあり得ない」「みんな同じだから我慢するしかない」と思っていました。顧問の先生にも相談できず、漏れていないか後輩や先輩に道着を確認してもらいながら練習していました。減量中は生理が重なると本当に体重が落ちず、寮生活で婦人科も遠く、知識もなかったため、「どうか減量末期に生理がこないで!」と願うばかりでした。笑
ー柔道のように、競技が体重別で行われることによりに生じる悩みや困りごとはありましたか?
吉池さん:
周りの選手を見ても、生理に関する悩みや影響を抱えている選手は少なくありません。私自身、当時は生理についての知識が乏しく、体重調整が最優先になり、競技に大きく影響していました。特に減量末期に生理が重なると体重が落ちにくく、精神的にも非常に辛い日が続きましたが、「体重を落とさなければ試合に出られない」というプレッシャーの方が大きかったです。
私は体作りのために5ヶ月で7kg増量し階級を上げた後、監督と相談して階級を下げるため、1ヶ月弱で7kgの減量を行った経験があります。後半の半月は食事制限をしても体重が落ちず、ほとんど食事ができず毎日イライラし、汗も出なくなり焦りばかりが募りました。練習は大会へ調整するためではなく「体重を落とすため」に行っている感覚で、結果コンディションが整わず惨敗しました。その時、生理が止まって1ヶ月来ていない状態も「好都合」と感じてしまうほど感覚が麻痺していました。
柔道では自分の体に合った階級を選ぶのが基本ですが、ライバルやチーム状況で変更することもあります。小学生の頃、全国大会で階級を分けるため同期が1ヶ月で5kg近く減量し、計量で300gオーバーして出場できず、翌年には競技を辞めてしまいました。他にも、減量が間に合わず大会2日前から氷だけで過ごす選手や、大学前日の夜に限界で、陰で水を飲み当日計量2kgオーバーという選手もいました。長期間生理が止まったという話も耳にしています。
それでも当時は、産婦人科に行くという発想はほとんどなく、生理への理解や生理が止まることへの危機感は非常に低かったと思います。競技のために階級に体重を合わせることは大前提かもしれませんが、極端で無理な減量はメンタル維持も体調管理も非常に難しく、成長期の減量は特に危険だと、周りのアスリートの姿を通して痛感しました。
ートレーナーやコーチとしてアスリートと向き合う立場になられてから、ご自身が選手として競技に取り組んでいた頃と比べると、女子アスリートならではの体の変化や生理について、コーチや指導者へ“相談しやすい環境”に変化したと感じますか?
吉池さん:
以前と比べ、アスリートが自身の体の変化を指導者やトレーナーに伝える機会は増え、相談しやすい環境になりつつあると感じています。ジュニアアスリートでは、本人だけでなく保護者から相談をいただくケースも増えてきました。
一方で、生理に関する相談はまだ「比較的」しやすくなった程度で、特に男性指導者へ直接話すことは、思春期の女子アスリートにとってはハードルが高く、結果として何も言わずに我慢してしまうことも多いように感じます。
最近では、1252プロジェクトをはじめ、生理について積極的に学ぼうとする指導者やトレーナーが増え、医療従事者の中でも、女性アスリートのサポートの仕方等、生理について触れる機会が増えてきました。こういった学びの機会がどんどん増えて、より一層女子アスリートが活動・相談しやすい環境が出来ていけたらいいなと感じています。

ー検定を通して印象に残った学びや、考え方の変化はありましたか?
吉池さん:
一番印象に残ったのは、漢方がドーピング禁止物に該当する場合があるという点です。
鍼灸師の資格取得のために東洋医学を学ぶ中で、漢方は自然由来でアスリートが自由に使用しても安全、反対にピルは禁忌と思い込んでいました。自分の無知さと学ぶことの楽しさを実感し、より一層勉強に打ち込む事ができました。
どの章でも、生理との関係や競技への影響を深く体系的に学べました。学生時代に知っていれば競技に活かせたし、当時学びたかった・知りたかったと強く思いました。
また、近年女子選手との関わり方に悩む指導者の声を多く聞きますし、私自身も同性であってもセンシティブな部分には踏み込み方の難しさを感じていました。今回の学びを通して、女子アスリートと向き合う際のマナーやコミュニケーションについて改めて考える機会となり、指導の仕方やトレーナーとしての姿勢を見直すことができました。
ー学んだ内容を、今後どのように活かしていきたいと考えていますか?
吉池さん:
私の所属する長野県柔道連盟では、女子選手の強化練習会の中で、生理についての座学や、ショーツの紹介など、選手、指導者、保護者の方へ、技術以外の部分も学んでいただける機会を作っています。そこで、この検定で学んだ知識と自分自身が経験した内容などを、復興部の先生方や地区の先生方に協力して頂きながら、共有していきたいと考えています。
また、女子アスリートの治療やサポートを行う医療従事者の方の中には、以前の私のように、動作改善やフォーム修正を重点に置き、性別や生理のことを考えきれていなかったり、そこに関して問診評価を行うことに躊躇し、深く考える事ができずに治療を進めている方も少なくないのではないかと思います。その様な方々の為にも、まずは小規模で勉強会などを開催し、意見交換や知識の共有を幅広いジャンルの方とできたらと考えております。
このような活動を継続して行う事で、自分自身の知識をアウトプット新たな意見や学びをインプットする事ができると思っています。
ーご自身のライフスタイルの中で、学ぶ時間を確保するために工夫されたことはありますか?
吉池さん:
常に『1252公認 女子アスリートコンディショニングエキスパート検定』のテキストを持ち歩き、仕事の休憩中に参考書を読み、家に帰り家事をこなした後、寝る前の時間に1日で読んだ部分をノートにまとめるなど、少しの時間で勉強する様に心がけていました。
また、1252プロジェクトのInstagramをフォローし、定期的に投稿される問題に取り組んだり、Playbookを見直すことで、短い時間でも効率よく学習できるよう工夫していました。
ーこれから受検を検討している方や、学ぶ時間を取りづらい方に向けて、どんなメッセージを伝えたいですか?
吉池さん:
あくまでも私のやり方ですが、少しでも"時間がないけど、勉強してみたい!"という方のお力になれたら嬉しいです。
私は長野の地方に住み、フルタイム勤務と家庭を両立していたため、都内での対面受検が必要であれば受検を迷っていたと思います。
しかし1252検定はオンライン受検が可能で、期間の指定はあるものの細かい時間の指定がないため、1日の中で数時間だけ時間を確保すれば受検できました。この仕組みは働く主婦にとっては非常にありがたかったです。。
働いている方は、なかなか学ぶ時間を取りづらいと思いますし、家庭があれば尚更、自分の時間でさえ取る事が難しいかと思います。1日にたくさん勉強することや、まとまった時間を作ろうとするよりも、1日の中の数時間、数分だけでも参考書を読む事が大切なのかなと考えています。そして、その日学んだ事を家族に話したり、1人でお風呂に入りながらぶつぶつ唱えるとアウトプットしやすいのかなと思います。
時間がなくても「勉強してみたい」と思う方の背中を、少しでも押せたら嬉しいです。

ーーーーーーーーーー
1252エキスパート検定で得た知識を自身の携わる選手のサポートだけでなく、指導者や保護者など様々な人たちと共有して広く役立てたいと願う吉池さん。
仕事や育児に忙しい日々の中で工夫を重ね、短期間で2級そして1級まで合格を勝ち取るその姿勢がとても印象的でした。
1252エキスパート検定は、「忙しくても学びたい」という想いに寄り添い、どこにいても自分のペースで学べる検定です。
あなたもぜひ、アスリートを支える正しい知識を得る一歩を踏み出してみませんか。
ーーーーーーーーーー
<吉池佑理さんプロフィール>
長野県柔道連盟女子復興部役員
鍼灸師
アスレチックトレーナー